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2008/12/02
04:33
才能と状況

今日は、とっても考えさせられたできごとについて。

 

最近入院してきた若い患者。

お若い方で20代の方なんですが体調が悪くなり入院。

そんな彼に残酷な話。「透析をしなくてはならない」。

透析って知ってます?腎機能を補う目的で行う治療です。

腎臓にはいくつか仕事があって、大体で言うと水分の排泄とか電解質の調整とかホルモン分泌とか毒素の排泄とか血圧の調整とかがありまして。小難しいから端折ると、たくさんあるうちのいくつかの機能を補うのが透析。でも、勿論すべてを補えるもんじゃないのでね、ある程度のコントロールが必要です。食事とか水分とかね。そうしないと、腎臓が悪いってことは直接死に直結してしまうんです。

臓器で悪くなるとどうしようもないものっていくつかあるけど、肝臓と腎臓はすごく大変。

まあそれはさておき。透析にも種類があって、腹膜に透析液を入れて透析をする腹膜透析と、直接血液を体外循環させて透析する血液透析。

どっちにも利点はあるけど、どっちにしても透析に時間を費やすしすべての機能を補えるわけじゃないから、ハンデはできる。

腹膜は腹膜透析用にお腹にチューブを入れる手術をしなくてはならないし、血液透析は安定した循環量のある血管を作らなくっちゃならないから、アクセスを作る手術をしなくてはならない。

さてここで、問題が発生。

血液透析の場合、ブラットアクセスは大体手に作る。利き手と反対にね。静脈と動脈を繋げて、血管の血流を増やす。じゃないと十分な透析効率が得られないから。手足の静脈なんて流れてる血液はたかがしれてる。

この手術は局所麻酔でやるから、侵襲も少ないし神経なんかもそのまま。でも、それは一般的に生活する上での話。

この患者さん実は、ピアニストさんだったんです。それはつまり、手にアクセスを作るって事は、ピアニスト生命が終わってしまうことも考えられるわけで、すごくすごくその人にとっては大問題だと思うのですよ、私は。

でも、外科医が出した言葉は「神経には影響はない」。そりゃないよ、センセイ。ピアノって繊細な楽器なんだぜ?

音楽ってすごいもんだよ。全世界共通言語だもの。

わかってない、わかってないよ。

すごい才能だよ。留学してプロになるって。なりたくっても誰だってなれるわけじゃない。素晴らしい才能だよ。

アクセスは他のところだって出来る。例えば足に人工血管で作るとか。左足ならペダルを踏むのだって支障ないはず。

それに血液じゃなくたって腹膜って選択肢もあるんだし。

 

命には代えられない。

それは当然。知ってるよ。

でも、さ。私だったら、死んだほうがマシだな。

悔しいだろうな。

留学して苦しみながらもその才能を信じながら生きてきたんだろうに。一瞬にして光を失う。

あんまり、患者に感情移入しすぎるのはプロ失格だ。

でも、私はプロである前に血が通った人間でありたいから。

 

 

時々、想像してみる。

見えない苦しみや、息ができない苦しみ。

目を閉じて息を止めて。

苦しかった。悲しかった。

鼓動だけが自分の耳に残って。

「生きてる」

でも、「心が張り裂けそうだ」と思った。

 

友達にもいずれ失明してしまう難病を抱えて生きている人がいます。

その子はホントに気丈で、明るくって、輝いてて、すごく眩しい。

 

 

もしも、ある日自分が突然告げられてしまったら。そう考えたら、日々幸せを噛み締めなくっちゃなあとか思ったり。もっともっと、いろんな人やものに出会いたいな、とか思ったりするのです。

私には人に自慢できる才能とか、揺ぎ無い信念とかないんだけど、それでもひとつ確かなことは「生きてる」そしてささやかだけど人の心に何か残していきたいな、ってこと。

私の存在が消えても、その人の中にささやかな心が残ればいい。

ささやかな感情の動きがあればいい。

それでいい。

だから、私は思い出す。ささやかだけど心が揺れる出来事について。

たくさんの出来事とたくさんの人に出会って、今の私がある。それをわすれないでいたいなあと思います。



詳細: http://blogs.myspace.com/index.cfm?fuseaction=blog.view&friendId=1004157579&blogId=453148400#ixzz15ccYtEzp

 
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